濃い雨雲で覆われた空の下、奥深いウネウネとした山道を進むバスに乗っている。雨は降っていない。
乗客は私と私の香港在住の友人(女性Kさん)の二名。後部座席に座っている。
私はKさんに渡されたモノクロ写真を見つめている。
それには幾何学模様の中に見知らぬ女性の横顔が写っていた。
我々は今、この女性の何回忌かの法要に参加する為にこの山道をバスで進んでいるらしい。
そして場面は暗い和室。
十畳程の部屋の角に仏壇があり正面に住職がおり、その周りに6〜7名の人々が正座していて、少し離れて私達と後もう一人、あの江○さんがいた。
しばらくすると住職がお経を唱え始めた。
すると○原さんが「わ〜集まってきましたね。見えない人達が沢山集まってきて部屋が一杯になりましたよ。」と呟いた。その瞬間である。
正座していた私の体は膝の方向にズルリと滑り落ち、実体から離脱した。
俗に言う幽体離脱というヤツか?
体感として近かったのは、プールサイドから膝から水に落ちて入っていく、みたいな…。
私は実体を離れてそのまま浮遊し、部屋の中をぐるぐるとそこにいる人々をすり抜けながら何度も回った。
そして何度目かの時に一度だけ仏壇の中にスルリと入り込んだ。その時だ。
「熱っ!」
仏壇の蝋燭の火を通過した時にその熱さは感じられた。
「幽体となっても火は熱く感じるのか…。」
新しい発見であった。
すると座っていた中の誰かが
「そういう事をするからそういう事になるんです。」
みたいな事を言ったのが聞こえた。
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